
沖縄の壺屋焼と聞かれれば、必ず出てくる名前が、「金城次郎」。沖縄が生んだ人間国宝であり、彼の独特の技法は、今の陶工たちにも引き継がれています。そんな金城次郎の世界を少し覗いてみましょう。
金城次郎とはどんな人?
沖縄県初の人間国宝に指定された金城次郎さん。彼の生い立ちに迫ってみます。
陶芸家への第一歩
金城次郎さんは、大正元年(1912)年12月に、沖縄県那覇市与儀で生まれました。陶芸の道に入ったのは、金城次郎さんが13歳のことでした。最初に入門したのは、壺屋にあった新垣永徳さんの製陶所。金城次郎さんは、ここで、陶芸の基礎を学びます。
壺屋に工房を作る
1945年に沖縄戦が終結すると、翌年の1946年に金城次郎さんは那覇市壺屋に築窯します。ここで、濱田庄司さんや河井寛次郎さんなどの指導の下、壺屋焼の発展に努めていきます。
金城次郎さんに影響を与えた二人の人物
金城次郎さんの独特の技法に大きな影響を与えたとされているのが、濱田庄司さんと河井寛次郎さんでした。
濱田庄司さんってどんな人?
濱田庄司さんは、現在の神奈川県川崎市の出身です。現在の東京工業大学窯業科に入学した濱田庄司さんは、板谷波山氏に指示し、窯業の基礎を学びます。卒業後に、同大学の2年先輩だった河井寛次郎さんとともに、京都市立陶芸試験場で釉薬の研究などを行いました。
ちょうど金城次郎さんが新垣永徳さんの製陶所で陶芸の道に入ったころ、濱田庄司さんも、沖縄に滞在し、壺屋焼などを学んでいました。このことが、金城次郎さんと濱田庄司さんの接点となったと考えられます。
濱田庄司さんは、その後、かねてから関心を寄せていた益子焼の産地で作陶を開始しますが、その後も、金城次郎さんとの交流は続きました。金城次郎さんの作品を初めて東京で紹介した東京三越本店での展示会(1970年開催)の成功にも、濱田庄司さんが深く関わっていたといいます。
河井寛次郎さんってどんな人?
河井寛次郎さんは、現在の島根県安来市出身の陶芸家です。河井寛次郎さんの特徴的な点は、陶工に関する様々な技術や知識を、特定の師匠からではなく、学校の指導によって学んだというところにあります。
濱田庄司さんよりも2年早く、現在の東京工業大学に入学した河井寛次郎さんは、卒業後、京都市陶磁器試験場に入所し、1万種以上の釉薬の発見や、過去の陶磁の研究などを行いました。
その後、1920年には、京都の五代清水六兵衛氏の窯を譲り受け、自らも京都で作陶を開始します。金城次郎さんとは、濱田庄司さんの助手を金城次郎さんが務めていた時期があることから交流があったと考えられます。
沖縄本土復帰の年に読谷村に移住する
長く那覇市壺屋を拠点に、独自の技法で新しい壺屋焼を創作し続けていた金城次郎さんでしたが、1972年に、喜納焼発祥の地である読谷村からの誘いを受け、読谷村への移住に踏み切ります。ここで築窯したのが、「読谷壺屋焼・金城次郎窯」でした。
金城次郎窯は現在も見学できます
- 住所:沖縄県中頭郡読谷村座喜味2653-1(やちむんの里内)
- 電話:098-958-4468
4カ月の西洋を乗り越え沖縄初の人間国宝へ
読谷村に移住した金城次郎さんは、その後も精力的に創作活動を続けます。その功績が認められ、1972年には、沖縄県指定無形文化財技能保持者に認定。さらに、1977年には、「現代の名工」としても表彰されます。
ところが1978年12月、突然、高血圧で倒れ、4カ月に及ぶ静養を余儀なくされた金城次郎さん。その後、無事に回復した金城次郎さんは、1985年に沖縄県初の人間国宝に認定されます。さらに1993年には、勲四等瑞宝章を受章しています。
高齢を理由にひっそり引退していた
金城次郎さんは、1997年の春ごろに、引退しています。高血圧で倒れた後も、強い創作意欲から奇跡の復活を遂げ、その後、高齢で足腰が不自由となってからも、車いすに乗りながらの創作活動が続いていたといいます。その間、何度も家族からは引退を勧められていた金城次郎さん。引退間際には、イメージした作品が作れないことに悩んでいたといいます。
最終的には、家族会議を開いて、同年3月末ごろに引退を決めたそうです。
美術館で金城次郎の世界を楽しもう
金城次郎さんの作品を実際に見て楽しみたい人におすすめなのが、こちらの美術館です。
読谷村率美術館
読谷村率歴史民俗資料館に併設されている美術館です。読谷村の誘いを受けて移住してきた金城次郎さんの作品のほか、同じく人間国宝である与那覇貞さんの読谷山花織などが展示されています。
- 住所:沖縄県読谷村座喜味708-6
- 見学時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
- 入館料:大人200円、小中高生50円
- 休館日:月曜日、祝日、年末年始
那覇市立壺屋焼物博物館
金城次郎さんが生まれた那覇市にある博物館です。金城次郎さんの作品をはじめ、沖縄を代表する陶工たちの作品を一堂に展示しています。博物館は、壺屋やちむん通りの入り口にあるため、見学後、通りを散策しながらお気に入りの焼物を見つけるのもおすすめです。
- 住所:沖縄県那覇市壺屋1-9-32
- 電話:098-862-3761
- 見学時間:10:00~18:00(採取入城17:30)
- 入館料:大人350円、大学生以下はすべて無料
- 休館日:月曜日、年末年始