
沖縄の女性は、古くからその土地や自然に宿る神さまへの祈りを毎日の日課としてきました。その祈りのプロのような存在が、ユタです。度々トラブルになるユタとの付き合い方に困ったら、こんな方法を試してください。
そもそもユタってどんな存在なの?
沖縄には、たくさんの神さまがいると考えられています。わかりやすく言えば、日本全国でよく見られる「八百万の神」という考え方です。神様には本当にたくさんの種類があり、家を守る女性にとって最もメジャーな神様は、台所の神さまである「ヒヌカン(火の神)」です。旦那さんの実家に仏壇がある場合は、ほとんどが台所に、ヒヌカンを祀るための小さな香炉が準備されています。
家の中の代表的な神様といえばヒヌカンですが、家の外に出れば、それこそ、数えきれないほどの神さまが存在しているといわれています。その多くは、自然の中にあると考えられており、神さまがいらっしゃるといわれている場所は、「拝所」と呼ばれ、小さな祠が建てられていることもあります。
このような拝所では、神さまに祈りをささげるプロであるユタの姿をよく見かけます。ユタは、自らの意思で神様に祈りをささげることもありますが、一般人から依頼を受け、代理として祈りをささげることもあります。
簡単にユタを説明するとどんな人のこと?
ユタは、これまでさまざまな歴史や弾圧を受けてきた存在です。様々な立場からいろいろな意見があるのですが、宗教的な立場から見れば、「巫女」という扱いになります。
ただし、本土の神社で見かけるような巫女とは違い、「直接神さまに仕える女性の神官」というのが、正しいかもしれません。
嫁ぎ先の親戚づきあいで度々登場するユタの存在
沖縄に存在する様々な神様と個別に契約を結んでいるユタは、今でも沖縄の女性の間で、一定の支持を受ける存在です。ユタが唱える宗教観のことを「単なる民間宗教の一つだ」といってしまえばそれまでなのですが、そう簡単にはいかない事情があります。
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ユタが指摘する仏壇に関する問題
沖縄県内には、数えきれないほどのユタが存在しているといわれています。日本では、ユタという職業を正式な職業として認めていませんので、実際の数がどれくらいなのかを把握することはできません。ただし、古くから沖縄では、ユタには人間では考えられないような神の力が宿っていると考えられているため、神さまの言葉を代弁してくれる特別な存在とされています。
ユタにも、様々な種類があり、ユタの位や霊力によって、扱うことが出来る領域が決められています。ただし、旦那さんの実家や親戚の間でユタが関わってくる場合は、主に仏壇に関する問題に集中します。
沖縄の仏壇の継承には昔からタブーがある
沖縄の仏壇の継承には、昔からタブーがあります。ここではわかりやすく「仏壇」といっていますが、正しくは「トートーメー」と呼ばれる位牌のことになります。
沖縄では、男子直系のルールがあり、代々家を引き継ぐのは、一家の長男であるというのが大前提にあります。そしてその家を引き継ぐのは、長男の直系家族のみとされているため、次男以降は、独立を機に、新たに自分が一族の長となり仏壇を作る必要があります。こうした古いしきたりがあるために、沖縄の長男嫁は苦労するといわれています。
タブーを破るとたたりがある
沖縄の位牌であるトートーメーは、先祖代々の位牌を一つにまとめた形をしています。
もしもトートーメーを見たことがなければ、国会議員が登庁した際に自分の名前の札のボタンを押すシーンを思い出してみてください。議員一人ひとりの名前が書かれた札のことを、トートーメーの中のご先祖様一人ひとりの位牌だとしたら、議員全員の名札が掲げられているボードがトートーメーとなります。そのトートーメーを納めている場所が、仏壇となるため、「ご先祖様に関する問題=仏壇に関する問題」となります。
先ほども説明した通り、トートーメーにはタブーが存在します。そのタブーは、仏壇の供養に携わっている生きている一族の人がわかる範囲のものもありますが、すでに亡くなった人でしかわからない過去のタブーもあります。このタブーを指摘し、筋を通して供養をする専門家が、ユタとなります。
ここからもわかるように、生きている人ではわからないようなタブーが、突然ユタによって指摘されることもあります。生きている人の間では、ユタが指摘する内容が本当に正しいのか、それとも間違っているのかを知るすべはありません。ですから、ユタの存在やユタの指摘することに対して否定的な意見を持っている人も多いのが現状です。
ただし、ユタによれば、タブーを犯したままの位牌では、ご先祖様の祟りが生きている子孫にも影響を及ぼすといいます。たたりによる影響は様々なものがあるといわれており、家庭不和や不妊、原因不明の精神疾患や体調不良などを引き起こすこともあると考えられています。
実家のお姑さんにユタを勧められたら
家庭内に起こる様々な問題の原因を解決してくれると信じられているユタですから、実家のお姑さんによっては、ユタに対する信頼が強い場合もあるでしょう。でも、嫁の立場から「ユタは民間宗教だから」といってしまっては、お姑さんとの関係に悪影響が出てくる場合もあります。
とはいえ、あまりにもお姑さんの意見に流されてしまうと、一日の大半をユタや祈りに関する行事に振り回されてしまったり、御祓い(沖縄では「ウガミをたてる」といいます)に多額の費用をかけてしまうこともあります。このことが原因で離婚に発展してしまったケースもありますから、これでは元も子もありません。
そこで、お姑さんとの関係を良好に保ちながらも、できるだけユタと距離をとるためのコツを紹介します。
ユタの存在を完全否定しない
ユタが唱える世界観は、とても独特です。この「独特」という表現は、一人ひとりのユタが、それぞれ別々の神さまと個別に契約をしているため、ユタ同士で同じ世界観を持っていないからなのです。
たとえば、空の神さまと契約をしているAというユタと、海の神さまと契約をしているBというユタがいたとしましょう。
空の神さまも海の神さまも、それぞれ住む場所も世界観も全く異なります。異なる神さまですから、ユタに伝える言葉(日本語と外国語の違いと同じような次元)にも違いがあります。ただし、それぞれの神さまと個別で契約を結んでいるAとBには、契約した神さまの言葉や世界観は理解できます。
このように、ユタの唱える世界観は、ユタ同士でも理解し合うことが難しいほど、とても複雑です。お姑さんが信頼を寄せているユタの世界観は、あくまでもそのユタの世界観であり、その他大勢のユタとは違うという考え方が根本にあります。
ですから、お姑さんが信じるユタの世界やその存在をすべて否定してしまうと、お姑さんの考えや存在を否定してしまうことにつながってしまいます。こうなると、人間関係が壊れてしまいます。
様々な考え方があるうちの一つだと認めてあげ、受け入れられる範囲は、優しく受け止めてあげるというのが、一番良い付き合い方だと思います。
カウンセラーとして頼っているだけかもしれない
家庭の中で起こる問題は、人それぞれです。はたから見れば些細なことに思えることでも、本人にとっては重大な問題だと考えていることもよくあります。誰かに相談することによって問題が解決することもありますが、多くの場合は、心の問題であったりします。
かつてこうした心の問題に対して対応してくれる医者はいませんでした。今であれば心療内科などを受診して、精神科医や診療カウンセラーなどの専門家と相談しながら解決する方法がありますが、そういった専門機関がなかったころに受け皿となったのが、女性神官であるユタでした。
それだけに、今でもカウンセラーとしてのユタとつながりを持つ女性はたくさんいます。ユタは、直接問題に対して解決の方法を指示してくれるわけではないのですが、心の悩みを打ち明ける場所にはなります。
もしもそのようなことが原因でお姑さんがユタを頼っているのであれば、同じ悩みを持つかもしれないあなたに対して、善意でユタを紹介しているのかもしれません。それであれば、あなたが積極的にお姑さんに自分の想いや悩みを打ち明けたり、一緒に会話をする時間を増やすことによって、あなたがユタではなくお姑さんの存在を頼りにしているということが分かってもらえるはずです。
仏壇のことでユタを勧められたら
これは、女性だけで解決する問題ではありません。どうしようと悩む前に、あなたの旦那さんに相談してみましょう。問題が大きくなる前に、一族の間で一度問題を相談する場所を開いてもらうように促すのが一番です。