
南国リゾート地としても有名な沖縄では、時間が流れるスピードが都会と比べてゆっくりしていると感じます。これがいわゆるうちなータイムです。でもうちなータイムには移住者が間違えやすい暗黙のルールがあります。
そもそも「うちなータイム」とは?
うちなータイムというのは、簡単に言えば「沖縄独特の時間感覚」のことを言います。「うちなー」は沖縄の方言で「沖縄」を意味していますので、直訳すると「沖縄時間」となります。
「なんくるない精神」がうちなータイムを理解するポイント
沖縄に移住してくると、いろいろな場面で「なんくるない」という言葉を耳にします。「なんくるない」という言葉はかなり広範囲で使われるため、「なんとかなる」と解釈することもあれば「たいしたことではない」と解釈することもあります。ただしこの言葉が持つ本来の意味と比べると、これらの意味とは解釈にズレがあることが分かります。
本来「なんくるない」という言葉には、「正しい事(正しい行動)をしている」という前提がついています。人生の中では思うようにいかないこともたくさんあります。大きな問題や困難にぶつかってしまった時、「どうして自分だけこんなに苦しい想いをしなければならないんだろう」と思い詰めてしまうこともあるでしょう。でもそんな時にこそ使われるのが「なんくるない」という言葉なのです。
つまり「なんくるない」という言葉は、「常に正しい行動をとっているのであれば、どんな困難にあったとしてもいつか正しい方向に向かっていくから、自分を信じてじっと時が過ぎるのを待ちましょう」という意味になります。だからこそ問題が起きたときや落ち込んでいる人を見かけた時に、「なんくるないさ」と声をかけるのです。
時間に追われることで自分を見失う方が不幸
なんくるない精神の意味からうちなータイムについて考えてみると、これまであなたが抱いていたイメージと少しズレが出て来るはずです。沖縄県民に根付いている「うちなータイム」は「時間にルーズ」というだけではありません。(もちろん、そのような意味で使うこともよくあります)
時間に追われる生活を続けていれば、確かに物事が正確に進む可能性は高くなります。でも時間に追われることによって、見失うものや忘れてしまうこともたくさんあります。失うものの中には、「自分らしさ」や「心のゆとり」もあるでしょう。
さらに時間が遅れることに毎日イライラしていれば、遅れる原因を作った相手や状況にストレスを感じるようになります。ストレスがたまった状態が長く続いていると心は疲れ切ってしまいますから、相手を思いやる心を持つゆとりもなくなってしまいます。。
つまり沖縄県民にとって「うちなータイム」は、時間を意識しすぎるあまりに失われてしまう「人としての心」を忘れないために生まれた、「心を豊かにするための時間感覚」だということもできるでしょう。
うちなータイムの暗黙のルール【待ち合わせ時間は集合時間ではない】
うちなータイムで最も知っておかなければならないことは、「待ち合わせ時間は集合時間ではない」ということです。
たとえば沖縄の友人たちが、移住してきたあなたを歓迎するための飲み会を開いてくれたとしましょう。「○○のお店で20時に集合」というメッセージがメールやラインで送られてきたら、あなたなら何時にお店に到着しますか?
集合時間の15分前にはお店に到着している
これは本州の友人やビジネスの場合であれば、当たり前のルールですよね?しかもこの設定の飲み会では主役があなたですから、主役が集合時間に遅れて到着するというのは宴席を設けてくれた友人に対してとても失礼になります。
ところがうちなータイムでは、この行動そのものがNGパターンです。もちろん集合時間より早く到着して悪いことは何もないのですが、あなたはそのあとたった一人でかなりの時間を過ごすことになります。ちなみに集合時間ピッタリに集合場所に到着したとしても、同じことが言えます。
集合時間より15分遅れて到着する
うちなータイムで集合時間の15分遅れは、相手を待たせることなく、しかもあなたも一人ぼっちで待たされることが少ないベストなタイミングです。標準時間で考えれば「集合時間を15分遅れる」ということはマナー違反と取られてしまいますが、うちなータイムではこれでも「かなり早い到着」と解釈されます。
ちなみに集まる人数が多くなるほど遅刻する時間の範囲は長くなるのが、うちなータイムの暗黙のルール。そのため集合時間に15分遅れる程度では、沖縄県民にとっては遅刻の範囲に含まれません。
集合時間に自宅を出る
この行動パターンが身についてきたら、「うちなータイムをマスターした」といってもよいでしょう。そもそもプライベートでのうちなータイムは、「集合時間は自宅を出発する時間」というのが暗黙のルールです。そのため「自宅から集合場所までの距離が遠いほど集合時間から遅れる」というのが一般的です。
ただしうちなータイムは、相手とあなたとの関係の深さも重要になってきます。もしもあなたの沖縄移住歴が長かったとしても、初対面の県出身者またはそれほど親しくない相手の場合は、相手側の方があなたのことを「時間に厳しい本州出身者」と思って行動するようにしています。そのためいつものうちなータイムでの行動パターンは避け、少しでも早めに待ち合わせの場所へ移動するように気を使ってくれます。
つまりうちなータイムが通用するのは、お互いにうちなータイムが理解できる間柄であるということが前提にあるのです。この点を十分に注意しておくことが、上手に楽しく沖縄の友人たちと付き合うポイントになりますよ。