
沖縄県民であればほとんどの人が「聴いたことがある」「歌える」のに、なぜか県外ではあまり知られていないという沖縄出身アーティストがいます。沖縄県民の心をつかむその存在と歌にみられる共通点とは?
沖縄県民の心をつかむ歌にはある共通点がある
沖縄県民にとって音楽はとても身近なものです。ただ沖縄はこれまで琉球・日本・アメリカの時代を経て現在の沖縄の形が出来上がっているだけに、様々な文化を混ぜ合わせた「チャンプル文化」があります。
そんな沖縄では、老若男女問わず愛される歌があります。もちろんメジャーになったアーティストもたくさんいますが、それよりも「全国的にはあまり知られていないのに沖縄県民には超有名」というアーティストの存在のほうが大きいです。ダイレクトに沖縄県民の心をわしづかみにしているアーティストの歌にはある共通点があります。
歌には必ず方言が混じる
沖縄県民の心をわしづかみにするご当地アーティストの歌には、必ずと言ってよいほど沖縄の方言が歌詞にあります。沖縄の方言は地元では「しまくぅとぅば(島言葉)」と呼ばれていて、歌詞の一部をこれに変えることによって歌全体の印象がしっくりと耳になじんできます。
「海」と「祈り」のフレーズは欠かせない
ご当地アーティストの歌の中でも「これはよくわかる!」とだれもが答える歌には、「海」または「祈り」というフレーズが必ずと言ってよいほど含まれています。どちらかというとこの2つはセットとして使われることが多く、そのことが沖縄県民の沖縄愛にヒットするようです。
実は県民の中でもなんて言っているのか意味が分からない歌も多い
沖縄では方言を大切にしようという風潮が少しずつ高まっているのですが、沖縄の方言には地域によってさまざまなものがあり地域が違うと全く言葉が通じないこともよくあります。
さら同じ沖縄出身でも、年齢が若くなるほど「方言を話せない・聞けない」人が増えてきます。そのためごくごくわかりやすい沖縄方言はわかっても、「ガッツリ方言」となるとまったく意味が分からないということもよくあります。
そのため外国人アーティストの曲を和訳で見たときに思う「この歌詞ってそういう意味だったの?」というリアクションが比較的よく起こります。
地元では超メジャーなのに歌詞が難読すぎる【下地勇】
宮古島出身のアーティストである下地勇さんは、沖縄県民であれば一度は名前や歌を聴いたことがあります。ところがその歌はほぼ宮古島方言で歌われているので、宮古島出身の沖縄県民でなければその歌詞の意味を耳で聞いて理解することは不可能…。
ただし宮古島出身の私の友人の様子を見ていると、どうやら島の人間だからこそ通じ合える細かなニュアンスのようなものが彼の歌の魅力なのだということが分かります。
下地勇さんのディナーショーを宮古島出身の友人と一緒に見たことがあるのですが、正直言うと沖縄方言ですら完ぺきではない私にとっては最初から最後まで何を言っているのかさっぱりわからない…。ただ会場にいたお客さん(多分大多数が宮古島出身者だったのではないかな、と勝手に思っているのですが)の多くが、彼が歌う歌詞の一つひとつにうなずいたり涙を流したり…。
つまり下地勇さんは「沖縄県民の心をわしづかみにする歌には沖縄の方言が使われている」という説が間違いなく存在するということを確信させてくれるのご当地アーティストと言えます。
沖縄では大御所すぎる存在なのにあまり知られていない【古謝美佐子】
沖縄歌謡界で大御所と呼ばれるアーティストは、強烈な個性と一度聴いたら忘れられない歌声を持っている人が多いです。そんな大御所の中でも際立つ存在なのが古謝美佐子さんです。
彼女の歌といえばなんといっても「童神」があります。夏川りみさんが標準語バージョンで歌ったことでその歌詞の奥深さも含めて全国に広まっていったという感じがありますが、地元では沖縄方言バージョン(うちなー口バージョン)のほうがどうもしっくりきます。
何しろその歌を歌っているのが古謝美佐子さん。「オキナワ最強の子守歌」といってもよいこの歌は、古謝美佐子さんのハイトーンボイスの中に子を守る母の力強さが込められているからこそ味があります。
ただ実際に沖縄方言バージョンで聞いていると、歌詞全体の半分以上が意味不明という事態になります。「さすが沖縄歌謡界の大御所」といった感じではあるのですが、下地勇さん同様沖縄方言が前面に出すぎて解読するのに難しい歌が多いです。
エイサーの定番曲だけど歌詞の解読が難しすぎる【西泊茂昌】
沖縄でエイサーは特別な意味を持った踊りです。お盆の時期になると各地域でそれぞれの地域に伝わるエイサーを踊りますが、それ以外にもイベントになると必ず登場するのがエイサーです。もちろん子供たちが主役のイベントといえば「運動会」がありますが、ここでもエイサーは必ず登場します。
そんなエイサーでよく使われる歌を歌っているのが西泊重昌さんです。西泊重昌さんは、日本最短の島である与那国島出身のアーティスト。もちろん方言は与那国方言となるため、その言い回しはかなり独特です。
ただ西泊重昌さんの「風のどなん」という曲は、沖縄県民であれば必ず一度は聞いたことがある歌。ただしなんて言っているのかが皆目見当はつかない…。
シンプルかつ力強さを感じる歌であるだけに沖縄のエイサーの曲としてよく使われているのですが、「エイサーの踊りとマッチしている!」という以外にどう表現したらよいのか疑問。与那国方言の歌詞の意味が分からないだけに、「どんな歌なの?」と聞かれても「エイサーでよく聞く歌」という以外に答えに困ってしまうのです。
沖縄県民の心をつかんだご当地アーティストの名曲は永遠だ!
沖縄県民の心をわしづかみにするご当地アーティストの名曲は、時代がどれだけたっても受け継がれていきます。
有名アーティストがカバーすることによって「本当はこんな意味だったなんだ!」と改めて知ることもよくあるのですが、意味が分からなくてもなぜか無意識にくちずさんでしまう歌。それが沖縄県民に愛されるご当地アーティストの名曲なのでしょう。