
沖縄で豆腐といえば「地釜豆腐」のことをいいます。「豆腐買ってきて!」と頼んでも「木綿?絹?」なんて聞きません。あるとすれば「地釜?それとも島?」です。なぜ沖縄の豆腐は地釜豆腐と呼ばれるのでしょう?
地釜豆腐と島豆腐には一応違いがある
沖縄で豆腐といえば、一般的に「地釜豆腐」を言います。もちろんそれ以外にも「島豆腐」と呼ばれるものがありますが、地釜豆腐とは明らかに違います。
ではその違いはどこにあるのか、ということなのですがこの辺りの違いはややアバウトです。
どちらも本土で一般的な豆腐とは違います。なめらかさを感じるというよりも「いかにも豆腐を食べている!」という食べ応えがどちらにもあります。その点でいえば「絹豆腐」と「木綿豆腐」の違いに似ているような気もします。
確かに島豆腐の場合は、木綿豆腐に分類されます。でも木綿豆腐よりもやや硬く、炒めても煮物やなべ料理に入れても型崩れしません。その点でいえば島豆腐も木綿豆腐とはやや違うのかもしれません。
これに対して地釜豆腐は明らかに違います。パック詰めされた豆腐を手のひらに乗せても全く崩れません。それどころがずっしりと重たいです。適当に手でちぎっても全く崩れません。炒め物をしても煮物料理にしても、カットしたままの状態で食卓に出てきます。
もう一つ地釜豆腐と島豆腐の違いを揚げるとすると、値段の違いでしょうか?地釜豆腐はパック詰めされていても半丁(520g)で120~130円します。手作りの豆腐屋さんの地釜豆腐の場合は、同じサイズで200円前後します。
これに対して島豆腐の方は、パック詰めされている半丁(520g)で100円前後です。ちなみに手作りしている豆腐屋さんで島豆腐を見かけることは(私の経験上)ありません。
地釜豆腐って本当に窯で炊き上げて作っている豆腐だった
地釜豆腐は、沖縄で古くから伝わる伝統的な豆腐です。本土の豆腐と地釜豆腐の違いは「作り方の違い」にあります。
材料はどちらも大豆と凝固剤(またはにがり)に塩というシンプルなものです。これに関しては本土の豆腐も沖縄の地釜豆腐も同じです。
豆腐作りの第一段階は、生呉作りです。生呉は、乾燥した大豆を水でふっくらとするまで戻し、それをすり潰した状態のものをいいます。これは本土の豆腐でも地釜豆腐でも同じです。
次からの工程が本土の豆腐と地釜豆腐の違いです。本土の豆腐の場合、生呉を直接圧力なべに入れて煮込んでいきます。この時に泡が出て来るのを抑えるために消泡剤を使うことがあります。煮込みが完了したら搾り機にいれ「豆乳」と「おから」の2つに分けます。
分離出来たら豆乳に凝固剤(またはにがり)を入れかき混ぜ、豆腐用の型枠に入れて上からプレスします。しっかりと固まったら完成です。ここまでが本土の豆腐(または一般的な島豆腐)の作り方です。
では地釜豆腐の作り方にすすみましょう。地釜豆腐でも生呉を作る段階までは同じです。ただし生呉が出来たら、この段階で「豆乳」と「おから」に分けます。
取り分けた豆乳は昔ながらの大きな地釜に入れ、直接火をかけて沸騰させます。沸騰すると泡が出てきますので、この泡を丁寧に取り除いていきます。この作業が終わったら水を入れ、程よいタイミングでにがりと塩を加えていきます。
この状態で20分ほど加熱したものが「ゆし豆腐」です。ゆし豆腐はおぼろ豆腐のようにふんわりとしていますが、味が濃くやや硬めです。ちなみにゆし豆腐も沖縄の伝統食材の一つで、熱いうちに食べるのが常識です。
話を戻して地釜豆腐の作り方の続きです。ゆし豆腐が出来上がったら、成型するために型枠に入れます。型枠にゆし豆腐を流し終えたら上にふたをのせます。そしてふたの上に重石をのせしっかりと水けをきります。仕上げにもう一度プレスしてからカットすれば、伝統的な地釜豆腐の完成です。
地釜豆腐の味やニオイが好き・嫌いの分かれ目
地釜豆腐は、本土出身の移住者の中でも好き・嫌いがはっきり分かれます。地釜豆腐の特徴は「豆の味が濃い」「食べ応えがある」ですが、それが苦手だという人も多いです。さらに温かいうちは豆のニオイが強いので、「ニオイが苦手だからそのままでは食べられない」という人も意外と多いです。
たしかに初めて私が地釜豆腐を食べた時にも同じような感覚がありました。でも食べすすめていくうちにこの独特な感じがないと豆腐を食べた気にならないようになってきました。そこまでたどり着くことが出来た理由も、豆腐を使った沖縄料理にあります。
沖縄の家庭料理のメインは「チャンプルー料理」です。なんでもフライパンの中に入れて炒めればチャンプルー料理になるのですが、メインとなる食材によって「ゴーヤーチャンプルー」「フーチャンプルー」などと名前が変わります。でもほとんどのチャンプルー料理には地釜豆腐が入っています。

地釜豆腐は型崩れがしないうえに食べ応えがあるのでチャンプルー料理には重宝する食材なのですが、炒めることによって独特のニオイが消えるのです。もちろん豆腐の味がしっかりしますが、ほかの食材ともミックスされるので意外と気にならなくなります。この調理法は、地釜豆腐が苦手な人におすすめですよ。
沖縄の豆腐は奥が深い
沖縄の豆腐はとにかく温かいうちに食べるのが一番です。地釜豆腐も温かいうちに食べた方がより豆腐のうまみを感じます。もちろん押し固める前のゆし豆腐も温かいうちに食べるのが一番おいしいです。
まだ食べたことがない人はぜひ温かい沖縄の伝統的な豆腐を食べてみて!そうすればほかの豆腐との違いがよくわかるはずです。ちなみに温かいうちは何も味をつけなくてもほんのり塩味がするのでとてもおいしいですよ!