
沖縄では本土と違うことが山ほどありますが、そのうちの一つに「年齢のきき方」があります。「え?そこも違うの?」と思うかもしれませんが、沖縄社会で暮らすためにはこの違いを知ることが大事なのです。
一般的には「あなたは何歳ですか?」ときく
年を重ねるということはいいこともありますが、若さという点で見れば「出来るだけ年は取りたくない」というのが本音ですよね?
子供の頃は「ボクは何歳になったのかな?」と聞かれると指を使って元気よく「5歳!」なんて答えたものですが、二十歳を過ぎると1つ年を取るごとにため息が出るようになります。一番年齢を意識するのが2桁目の数字が変わるときです。
20代から30代へと変わる時には「30代」という響きを出来るだけ否定したくて「まだ20代です!」と言い切りますが、30代を過ぎると自分から年齢を申告する時にオブラートに包むという技を使うようになります。要するに「アラフォー」「アラフィフ」などがこれです。
でもそれは仕方のないことです。本土では相手に年齢をきくときに「何歳ですか?」と聞くのが一般的なのです。このように聞かれると「○○才です」と答えるしかありません。でもその答えを言うのはやはり恥ずかしい…。だから「アラフォー」「アラフィフ」という言葉を使って年齢をオブラートに包んでしまうしかないのです。でも沖縄はその点が違います。
沖縄の昭和生まれは「何年生ね?」ときく
沖縄で年齢をきく場合、「あなたは何歳ですか?」とはききません。その代り「何年生ね?」と聞きます。
私は移住したばかりの頃、この質問の意味が全く分からなかったです。答えに困っていると「若いってことよね~!」とそばにいたおばちゃんに助け舟を出してもらったのでなんとかその場は乗り越えましたが、結局何のことをきかれているのか全く分かりませんでした。
実は沖縄では相手に年齢をきく時、「何歳ですか?」ではなく「和歴(昭和)何年生まれですか?」と聞くのが一般的なのです。だから「何年生ね?」とたずねられたのです。
確かにこの訊き方は、ある意味でいい訊ね方とも言えます。例えばあなたが昭和50年生まれで質問した人の答えが「40年生だよ」であれば、あなたよりも10歳年上の先輩であることが分かります。もしも相手の答えが「50年生です」だと「同い年?で、どこの(中学校)出身?」となり、同じ地域の出身だということが分かると初対面でも意気投合するのです。
でもこの会話が成立するのは昭和生まれの人です。ギリギリ昭和生まれであればこの会話が成立するのですが、平成生まれが社会人を迎えて以降は沖縄のビジネス界でこの会話が成立しづらくなってきました。なにしろ年齢をきいても「平成生まれです」と返ってくると、「平成生まれか~」で終わってしまいそれ以上に話題が広がらないからなのです。
同窓会の案内看板では「○○年生」が主流
仲間意識が強い沖縄県民は、中学校の同窓会が一番盛大です。何しろ引っ越しをして転校することは都会でない限りあまりありません。ですから小学校の同級生は中学校の同級生になります。さらに小・中学校での仲間との絆は非常に深く、卒業後に同級生との集まりがある場合は中学校単位で開くのが一般的です。
ただし問題は「沖縄は子供の数が多い」ということです。ひと昔前は4人以上きょうだいがいても特別ではありませんでしたし、逆に2人きょうだいだと「きょうだいが少ないんだね」です。それだけに当時は一学年が10クラスあることも珍しくなかったのでで、同じ中学校の同級生であっても卒業まで一度も話をしたことがないこともよくあります。
それほど規模が大きな沖縄の中学校同窓会の告知には、必ず「○○年生」を使います。沖縄では同窓会の告知看板を街の至る所に設置するのですが、どの看板にも「○○中学校○○年生同窓会」と書かれています。
この看板は、沖縄社会を知らないと非常に違和感があります。でも沖縄社会に溶け込んでくると、これほどわかりやすい表示はないとさえ思います。だって年を重ねるほど、自分の年齢を忘れてしまうことってよくありますよね?でも生年月日を忘れることは絶対にありません。だから「何年生」という表示は沖縄社会においてとても便利な使い方といえるのです。